肝がんについて

1.肝がんの特徴

 肝がんは、肝臓そのものに発生する「原発性肝がん」と他臓器のがん(大腸がんなど)が肝臓に転移する「転移性肝がん」に大きく分けられます。原発性肝がんは肝細胞がんと胆管細胞がんが主で、9割以上は肝細胞がんです。肝細胞がんの原因の約7割がB型やC型肝炎ウィルス感染によるものですが、最近では、ウィルス性肝炎を認めない非B非C肝がんが増えてきており、糖尿病や肥満などのメタボリック症候群との関与が指摘されています。

2.治療方針と治療成績

 肝細胞がんに対しては、下図に示すガイドラインに従って、肝切除、局所療法(ラジオ波焼灼療法など)、肝動脈塞栓療法を肝機能(肝障害度)や肝がんの状態(腫瘍数、腫瘍径)に応じて選択しています。治療法選択は、毎週行っている消化管内科・肝胆膵内科との合同カンファレンスで検討した上で決定しています。
(1)手術症例数

 当科での肝切除症例数は増加傾向であり、最近では年間約70例以上となっています。

(2)肝がん切除成績

 当科での肝細胞がん切除後の成績を以下に示します。

(3)腹腔鏡下肝切除について

 当科では2008年より腹腔鏡下肝切除を開始し、2021年までに320例の経験があります。従来の開腹手術と比較して傷が小さく患者さんの体に対する負担が軽いのがこの手術の利点です。約75%の患者さんが術後10日以内に退院しています。しかし、全ての患者さんが腹腔鏡下肝切除の対象となるわけではありません。がんの位置や大きさなどで適応を決めるため、約半数が対象です。

 さらに腹腔鏡下肝切除は80歳以上の高齢者や肥満患者に対しても安全に手術可能であることを確認しています。高齢者は非高齢者と、肥満患者は非肥満患者とそれぞれ比較して腹腔鏡下肝切除後の短期成績(手術時間、出血量、術後在院日数など)に差はなく、その有用性については全国学会で発表しています。

3.当科における取組み

(1)術中造影超音波検査(平成29年3月20日 大分合同新聞掲載)

 腹腔鏡下肝切除の際、触覚を頼りにしたがんの位置確認が困難となります。当科では、腫瘍や周辺の血流状態の詳細な観察を行う目的で、2015年に県内で初めて術中造影超音波検査を導入しました。導入後は従来の術中超音波検査では検出できないような数ミリの微小な肝がんを発見できるようになりました。また、がんのある肝臓の場所に流れる血管の根元を遮断した状態で造影剤を注射することで、 がんのある部位と正常部位の境界線(肝切除予定線)を正確に映し出すことで、安全で円滑な肝切除が可能となりました。

(2)インドシアニングリーン(ICG)蛍光法

 ICG という薬剤が肝がんに停滞し、赤外光で蛍光を発する性質を利用することで、今まで肝臓表面からの視診では見つけることが困難であった腫瘍の同定が容易となりました。特に再発肝がんに対する腹腔鏡下肝切除の症例では大きな成果を挙げています。また、術中造影超音波検査と同様に肝切除予定線を正確に映し出すことができ、これらを組み合わせることで、さらに高精度かつ安全な腹腔鏡下肝切除が可能となりました。

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