腎交感神経焼灼術(しょうしゃくじゅつ)ってご存知ですか? ~高血圧のガイドラインが新しくなりました!~

大分県立病院ニュース

2025年10月31日

 日本における高血圧有病者は約4,300万人と推計されています※1。このうち治療を受けて血圧がコントロールできた患者さんはわずか27%(約1,200万人)、治療中でもコントロール不良な人が29%(約1,250万人)、本人に高血圧の認知はあるが治療を受けていない人は11%(約450万人)、本人が高血圧であることを認識しておらず治療を受けていない人がなんと33%(約1,400万人)と推定されています。また高所得国12か国の高血圧の管理状況において、日本は最下位のアイルランドに次いでなんと悪い方から2番目と評価されています※2
 このような状況を受けて、日本高血圧学会はこれまで生活習慣の改善や減塩などの対策に力を入れてきましたが、降圧薬を利用して血圧を下げる視点は不十分だったという反省のもと、2025年8月高血圧治療の教科書である高血圧管理・治療ガイドラインが改訂されました。
 高血圧の基準値は引き続き診察室血圧140/90mmHg(家庭血圧135/85mmHg)以上ですが、降圧目標は年齢に関係なく診察室血圧130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg)と統一されました。
 この新ガイドラインのアクションプランは”血圧朝活キャンペーン”であり、家庭血圧測定の推奨、血圧130/80mmHg以上で運動や減塩、ダイエット、禁煙、節酒、野菜や果物摂取などの行動変容による高血圧予防を目指します。また公式キャラクター『良塩(よしお)くん』を作成し、YouTube『良塩くんの部屋』を通して啓発活動を行っていますので、皆さんもぜひごらんください。
 一方利尿薬を含む異なる3種類の降圧薬を使用しても目標の血圧まで下がらないものを治療抵抗性高血圧(難治性高血圧)といい、約10%存在すると推定されています。治療抵抗性(難治性)高血圧の患者さんを対象とした新たな治療法として腎交感神経焼灼術が日本で開始されようとしています。
 この治療法は局所麻酔下に股のところの大腿動脈からカテーテルを腎動脈まで挿入し、その内腔から高周波カテーテルを用いて通電し腎動脈外膜の腎交感神経を焼灼することによって診察室血圧及び家庭血圧が10~20mmHg低下することが期待されています。ただし日本高血圧学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会の3学会による適切な適応基準と厳しい施設基準及び治療できる医師条件が設けてあり、誰でも、どこの病院でも治療が受けられる、どの医師でもこの治療ができるというわけではありません。当院は施設基準及び医師条件を満たしており、現在治療提供に向け鋭意準備中です。もし興味がある方は当科までお気軽にご相談ください。

(循環器内科 部長 山本 光孝)

※1 日本高血圧治療ガイドライン作成委員会編:高血圧治療ガイドライン2019: 10, 2019
※2 NCD Risk Factor Collaboration: Lancet. 2019; 394(101099): 639-651

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