急速輸血装置の紹介

大分県立病院ニュース

2025年09月29日

 「出血」は手術室での心停止の原因の1/3を占めるといわれており、これを防ぐために急速輸血(100ml/分以上)が必要となります。
 最も簡単なのが注射器を用いて手動で行うポンピングです。しかし、人力なのでスピードに限界があるとともに疲労により遅くなり、また手指消毒がおろそかになると、カテーテル感染のリスクが高まる可能性があります。また、輸血前に血液製剤を加温しておく必要もあります。なぜなら冷たいままの血液を大量に輸血すると、低体温症になり重症不整脈や心停止などを誘発するからです。

 そこで急速輸血を安全に効果的に行うために急速輸血装置があります。加圧型とローラーポンプ型の2種類があり、前者はLevel1TMシステム1000(ICU Medical社製)で当院救急外来にあります。後者は国産のSL One®(IMI社製)で最近手術室に導入されました。いずれも気泡検知・圧力検知アラームと加温機が内蔵されていて、急速輸血に伴う事故や合併症を防ぐ工夫がされています。SL One®は優れた機械なのですが万能ではなく、使用の際には以下の点に留意が必要です。

○輸血用血液製剤の確保・補充戦略が重要

○輸血合併症(低カリウム血症・高カリウム血症)に注意

○術者に出血をコントロールできる技術がないと救命できない

(麻酔科 部長 宇野 太啓)

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