肺がん手術の後の抗がん剤治療のお話
大分県立病院ニュース
2025年05月27日
肺がん治療の進歩により、肺がんと診断されてからの生きている期間は長くなってきています。この主な原因は、がん遺伝子変異を標的とした「分子標的治療」と、がんに対する免疫を有効化する「がん免疫療法」が開発されたことです。
これまで分子標的治療、がん免疫療法は、手術が不可能な範囲まで肺がんが広がった患者さんに対して行われてきましたが、2022年より肺がん手術後の患者さんのうち、再発高リスクと診断された患者さんに対して、再発予防を目的として適応となりました。これを「術後補助療法」といいます。分子標的治療では、現在2種類の遺伝子変異に対して、術後補助療法が保険適用され、効果は非常に高く、再発率を1/4程度まで低下させます。がん免疫療法の術後補助療法は再発率を2/3程度まで低下させます。
抗がん剤ですので、特有の副作用が出る可能性はあり、併存症をお持ちの方や高齢者では適応を慎重に判断する必要があります。
手術というのは患者さんにとって、人生の中でも大きなイベントであり、無事に乗り越えて退院され、安心される方は多いです。その後に抗がん剤治療となると、身体的にも精神的にもご負担がかかるかと思いますが、今回紹介しましたように再発を抑える点において非常に有効性が高いので、適応のある患者さんにはお勧めしています。
(呼吸器外科 副部長 橋本 崇史)