胸骨を切らない低侵襲心臓手術(MICS手術)を開始しました

大分県立病院ニュース

2025年05月27日

低侵襲手術とは

 心臓胸部大血管手術では胸部中央の胸骨を縦に切開する胸骨正中切開法(写真1)が一般的です。この方法は喉元からみぞおちにかけて20~30cm程度の傷で行うものです。
 これに対し、体への負担を少しでも減らすことができる低侵襲な方法として、胸骨の間から5~7cm程度の傷で行う肋間小切開法(写真2)などでの手術法があり、これらを総称して低侵襲心臓手術(MICS手術:Minimally Invasive Cardiac Surgery)と呼びます。
 当院でも2024年11月から心臓弁膜症の患者さんを対象に、九州圏内で有数のMICS手術件数を誇る長崎大学病院 心臓血管外科教授 三浦 崇 先生のサポートを頂き、右肋間小開胸心臓手術を開始しました。

低侵襲心臓手術のメリット・デメリット

 当院で主に行っている右肋間小開胸法のメリットとして、①胸骨を切らないことによる出血量を軽減できる点、②創部感染リスクを軽減できる点、③術後の運動制限がなく早期回復が期待できる点(胸骨切開の場合は2~3か月程度の間、自動車・自転車の運転や上半身を使用する肉体労働、スポーツの制限などがあります。)、④美容的な点(衣服・下着で隠れるため傷口が外から見えることは基本的にありません。)などが挙げられます。
 一方でデメリットとして、小さい傷での手術となるために手術操作が難しく、それに伴い手術時間や人工心肺時間、心停止時間が長くなる点などが挙げられます。しかし、手術法の確立・定型化に伴い短縮を図ることができています。

 この手術法は対象疾患やいくつかの身体的な適応条件があります。興味がありましたら、担当医へお気軽にご相談ください。
 当院ではさまざまな職種が関わりながら、安心・安全を第一とする心臓手術に取り組んでいます。患者さん一人一人に合わせた最適な治療を提供できれば幸いです。

(心臓血管外科 部長 山田 卓史)

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