術中迅速標本診断について

大分県立病院ニュース

2021年06月30日

 通常の標本診断では、内視鏡などで採取された材料(組織)をホルマリンで固定し、パラフィンに馴染ませます。パラフィンで固めた材料を薄く削りだして、ガラス板に載せ、これを染色してガラス標本が完成します。完成したガラス標本を顕微鏡で調べて、結果を報告書にまとめますが、ここまで少なくとも2日程度かかります。
※固定:ホルマリンなどで組織を固めて、腐敗・変性しないように安定化させること。

 これに対して術中迅速標本診断は手術中に提出された組織を-70℃で凍結し、これを削り出して染色し、ガラス標本を作製します。診断はすぐに行われ、通常20~30分後にインターフォンなどで手術室に結果を報告します。非常に速い標本作成方法ですが、標本は粗く、あくまでも大まかな診断にとどまります。

 手術中には切除断端の悪性細胞の有無、リンパ節郭清の必要性、腫瘍が良性であるか、悪性であるかなどどうしても知りたい時があります。このような時に術中迅速標本診断は使われますが、その必要性は高度な医療を目指すにつれて増しており、当院では年間300件以上行われています。

(臨床検査科病理部 部長 卜部 省悟)

この記事はお役に立ちましたか?

お問い合わせはこちら

気になるキーワードを入力してください。