放射線治療による副作用をやわらげるための取り組み 〜強度変調放射線治療の実施〜

大分県立病院ニュース

2019年01月18日

 がんを治す、がんの再発を防ぐことなどを目的として様々な放射線治療が行われます。しかし、放射線治療により、がん病変周囲の正常な組織にも放射線があたって副作用が起こり、毎日の生活に支障を来すことがあります。例えば骨盤部への放射線照射を行う場合、正常な小腸にも放射線があたって副作用の下痢が起き、つらい思いをされる方が少なくありません。当院ではこのような副作用を低減するために、小腸にあたる放射線の量を少なくする工夫(強度変調放射線治療)を行い、なるべくきつさを感じることのないように治療期間を過ごしていただこうと考えています。

 通常の放射線照射治療(図1)では前後左右の4方向から照射を行います。放射線が小腸にも照射されるため、高頻度で下痢が起きます。 強度変調放射線治療(図2)では、治療の対象となるリンパ節領域(色のついた部分)には照射されますが、照射を避けたい小腸には放射線があたらない(色がついていない)ことがわかります。強度変調放射線治療は複雑な照射法で、放射線治療装置があればどの医療機関でも実施できるというわけではありません。

 当院ではこの照射法に適合した治療装置が設置され、放射線治療専門医と放射線治療専門技師、放射線治療品質管理士、放射線物理士、がん放射線療法看護認定看護師など充実したスタッフが運用しているという整備された条件が、この治療を可能にしています。前立腺に対しての治療は数年前から行っていましたが、最近は骨盤部のみならず、耳鼻科領域の治療にも適用しています。この強度変調放射線治療は、これまでの放射線治療による副作用を減らすことができ、治療後の患者さんの日常生活の質の維持に貢献できていると考えています。

(放射線科部長 副院長 前田徹)

※掲載内容の詳細は各科外来・各病棟でお尋ねください。

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