児童虐待に対して

大分県立病院ニュース

2018年11月30日

 児童虐待は重大な社会問題のひとつです。ニュースなどでも取り上げられる機会が増えていて、実際にその相談対応件数は増加傾向です(図)。社会的認知が広がったことも増加の原因のひとつなのですが、虐待件数は実質的に増加していると考えられており、年間約50人の子どもが虐待によって亡くなっているのが現実です。

児童虐待の相談対応件数の推移

 「虐待」というと、子どもに暴力をふるうというイメージがありますが、それだけではありません。

虐待は・・・

  • 身体的虐待:殴る、蹴るなどの身体的暴力を加える
  • 性的虐待:性的な行為を強要する
  • 心理的虐待:言葉の暴力を行う
  • ネグレクト(保護の怠慢):子どもの心身の成長・発達に必要な世話や対応をしない

4つに分類され、順調に発達していくべき子どもの精神や成長発達を阻害してしまうような行動も児童虐待になると考えられています。
虐待についての対応としては、「虐待の発生予防」「虐待発生時の迅速な対応」「虐待を受けた子ども(被虐待児)の養護・支援」が重要だと言われています。

 当院では、"虐待対応チーム"を設け、虐待が疑われる子どもがいた場合には、個々のケースに対して、その都度、緊急会議を開き、対応を検討しています。
 チームには小児科医だけでなく、他科の医師や、看護師、医療ソーシャルワーカーが関わり、さまざまな専門的立場からの意見を集め、子どもにとって最適な対応を選択できるよう心がけています。
 また、救急外来などでの一般診療の中にも被虐待児が潜んでいる可能性があります。虐待は意識しないと見逃されることがあり、また見逃された場合、再受傷や死亡するケースもあるので、日常の中に潜む被虐待児を救い出さなければなりません。当院では虐待チェックリストをつくり、被虐待児の見逃しがないように注意しています。

 一方、虐待をしている親の側にも重大な苦悩を抱えているケースが多く認められ、子どもだけではなく、子どもを取り巻く環境、周囲社会に対する支援が必要です。
 その中で地域行政との連携は非常に重要であり、児童相談所や要保護児童対策地域協議会などの行政機関とも密に連絡を取り合って、診療内における子どもの管理だけでなく、社会における虐待の予防や被虐待児への対応、支援に関わっています。

 一方、虐待をしている親の側にも重大な苦悩を抱えているケースが多く認められ、子どもだけではなく、子どもを取り巻く環境、周囲社会に対する支援が必要です。
 その中で地域行政との連携は非常に重要であり、児童相談所や要保護児童対策地域協議会などの行政機関とも密に連絡を取り合って、診療内における子どもの管理だけでなく、社会における虐待の予防や被虐待児への対応、支援に関わっています。

 児童虐待はその子の一生に大きな負の刻印を残しかねない重大な人権侵害で、社会全体が抱える大きな問題であり、当院でも虐待への対応に積極的に取り組み、現状の改善に貢献できるよう努力していきます。

(小児科 副部長 原卓也)

※掲載内容の詳細は各科外来・各病棟でお尋ねください。

この記事はお役に立ちましたか?

お問い合わせはこちら

気になるキーワードを入力してください。