医療現場に広がる遺伝子検査

大分県立病院ニュース

2019年08月29日

 今回は、遺伝子を対象にした検査がどのような目的で行われているか、をご紹介します。

 今回は、遺伝子を対象にした検査がどのような目的で行われているか、をご紹介します。

ウイルスや細菌などの病原体を発見するため

 患者さんから採取した血液や髄液などから病原体の遺伝子を抽出して、病原体の正体を明らかにします。また、抗菌薬の効きにくさを知ることもできます。これまでは手間と時間がかかる検査でしたが、キットの開発や機器の進歩により、迅速に結果がでるようになってきました。

がんを正確に診断するため

 様々な種類のがんが知られていますが、代表的ながんでは、特徴的な遺伝子の異常が分かっており、それを見つけることで正確にがんを診断することができます。がんに特徴的な遺伝子異常は、いわば“指紋”のようなものなので、「治療してがん細胞がどれだけ減ったか」あるいは「再び数を増しているか」を見極めることにも使われています。

がんの治療薬を選択するため

 がんの発生や増殖が、特定の遺伝子の異常によって生じていることがあります。これをドライバー変異といい、それを狙い撃ちする薬(分子標的薬)があれば、効果的にがんを治療することができます。近年、分子標的薬を使えるシーンが多くなっているので、それに合わせてドライバー変異の検査数も増加しています。
 治療薬を決定するために、一部の乳がんや卵巣がんの原因となる遺伝子(BRCA遺伝子)のように、患者さんが生まれながらに持っている遺伝子異常を調べることもあります。しかし、ほとんどの場合は、生まれながらではなく、がんが発生する際に生じた遺伝子異常を調べています。

がんの新たな治療薬を見つけるため

 これまでご紹介した検査はいずれも目標とする遺伝子1~数個を狙い撃ちで調べるものでした。これに対して、ごく最近、保険承認された、“がん遺伝子パネル検査”では、がん細胞の数百の遺伝子を一気に調べます。遺伝子異常を効率よく発見して治療薬の選択に役立てようというものです。今後、検査結果の評価のしくみや結果への対応などが整備され、実用に供される見込みです。

(臨床検査科検査研究部 部長 加島健司)

※掲載内容の詳細は各科外来・各病棟でお尋ねください。

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