シニア世代の貧血

大分県立病院ニュース

2022年12月28日

 貧血とは、赤血球・ヘモグロビン濃度が減少した状態で、貧血の原因は多様であり、①赤血球産生の低下(造血障害)、②赤血球破壊(溶血)、③出血に大別されます。赤血球産生が低下する原因には鉄分やビタミンB12などの材料不足、造血幹細胞の異常、腎障害によるエリスロポエチン低下なとがあります[図]。

 貧血といえば若い女性の病気というイメージがありますが、高齢者にも多く存在しており、65歳以上の約10%が貧血状態にあるといわれています。ただし、若い女性と高齢者では貧血の原因に大きな違いがあります。高齢者の貧血に多い原因としては、①胃腸からの出血による鉄欠乏性貧血、②慢性炎症に伴う貧血、③骨髄の病気(骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫など)といったものがあります。

 貧血の典型的な症状は労作時の動悸や息切れですが、高齢者では活動度が低下しているために息切れを訴えず、元気がなくなる、反応が鈍くなるなどの症状を認めますが、「歳のせい」にされて発見が遅れることになりがちです。シニア世代の貧血には悪性腫瘍や血液疾患などの重大な原因が隠れている可能性が高いので、貧血を認めた時にはその原因を検索すること、血液内科を受診することが勧められます。

(血液内科 部長 大塚英一)

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