乳房再建のお話

大分県立病院ニュース

2020年11月30日

 乳房再建術とは、乳がんの手術により失った乳房を新しく作り直す手術です。
 これから乳がんの手術を受ける方も、すでに乳がんの手術を受けた方も、再建手術は可能です。 健康保険が適用されます(2013年より人工物を使用した再建にも適用されるようになりました。)。

 再建時期、再建方法は複数あり、それぞれ長所短所があり、状況に応じて選択します(表参照)。
 再建時期とは、乳がん手術と同じ日(一次再建)にするか、別の日(二次再建)にするか、です。
 再建方法とは、人工物を使用するか、自分の組織を使用するか、さらに自分の組織の場合、背中の筋肉脂肪を使用するか、お腹の筋肉脂肪を使用するか、等です。乳頭乳輪も希望に応じて再建可能です。

乳房再建の方法

1.人工物を使用する方法

胸の筋肉(大胸筋)の下にエキスパンダー(皮膚を伸ばすための風船のようなもの)を挿入する(手術)。
→エキスパンダーに生理食塩水を注入して少しずつ膨らませて皮膚を伸ばす(通院)。
→エキスパンダーを取り出してシリコンインプラントへ入れ替える(手術)。

2.自家組織を使用する方法

①背中の組織を使用する場合(広背筋皮弁)

 再建と同側の背中の皮膚と筋肉(広背筋)と腰の脂肪組織をひと塊として、背中の筋肉を連続させた状態で胸に移動させる。背中は縫合して1本の線の傷となる。

②お腹の組織を使用する場合
  • 腹直筋皮弁
    再建と反対側の筋肉(腹直筋)と腹部の皮下脂肪と皮膚をひと塊としてお腹の筋肉を連続させた状態で胸に移動させる。腹部は縫合して1本の線の傷になる。
  • 穿通枝皮弁
    腹部の皮膚と皮下脂肪を栄養する血管をつけた状態で切り離して、胸に移動させた後、胸の血管と吻合する。お腹の筋肉は一部切るのみで大部分は温存される。腹部は同様に縫合して1本の線の傷になる。

写真・イラスト提供:アラガン・ジャパン株式会社

※大分県立病院では、乳房オンコプラスティックサージャリー学会の認定のもと、乳腺外科・形成外科の協力体制により、一次再建・二次再建、人工物再建・自家組織再建ともに可能です。

長所と短所のまとめ

1.人工物VS自家組織

  長所 短所
人工物 体の他部位に傷が入らない
入院期間が短い  
手術回数が1回多い
露出感染の可能性がある
将来入れ替えが必要になる可能性がある
自家組織 質感、触感に優れる
将来の入れ替えが不要
                        
入院期間が長い
乳房部以外に傷跡が残る

2.背部VS腹部

  長所 短所
広背筋皮弁 筋肉の機能喪失がほとんどない 大きな乳房は再建困難
腹直筋皮弁 大きな乳房も再建可能  腹筋の筋力が低下する
妊娠希望者は不適
穿通枝皮弁 妊娠希望者も状況によっては可能  つないだ血管が詰まると全懐死の可能性がある

(形成外科 部長 加藤愛子)

※掲載内容の詳細は各科外来・各病棟でお尋ねください。

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